作品単価を上げ完売へ導く「アートカプセル」の額装戦略|アーティスト程亮介氏 |額装家多喜博子
- tenkuunomori
- 12月6日
- 読了時間: 6分
更新日:2 日前
投稿日:2025年12月6日

■ 事例データ
作家: アーティスト 程亮介(Ryosuke Tei)
額装年: 2025年5月
額装素材: アートカプセル(カラーアクリル・フルカスタム仕様)
作品サイズ: SMキャンバス(227×158mm)他、計14点
展示会: 程亮介 個展(2025年5月開催)

プロのアーティストが個展で「特注(オーダーメイド)額装」を選ぶ理由

プロフェッショナルなアーティストが個展という晴れの舞台で勝負をかけるとき、額装家は何をすべきか。それは単に作品を保護することでも、綺麗に飾ることでもありません。作品が持つポテンシャルを極限まで引き出し、コレクターの心を掴む「最強の舞台装置」を用意することです。
今回ご紹介するのは、デザイナーとしてのキャリアと美大油画科出身という高い技術を併せ持つアーティスト、程亮介氏とのコラボレーション事例です。
程氏の描くオリジナルキャラクター「D.O.A.T.」は、ポップでグラフィカル、そして一度見たら忘れられない強いパンチ力を持っています。この圧倒的な作品力に対し、既製品の額縁や無難な額装では作品の熱量が損なわれてしまうと感じました。そこで私が提案したのが、作品1点1点に合わせて色彩を設計する「攻めのカラーカスタム」によるアートカプセル額装です。
程氏はアートカプセルをこの個展の1年前にGODTAIL氏の個展で直接ご覧いただいており、自身の個展の際には使ってみたいと興味を持って額装家多喜博子のInstagramをフォローしてくださっていました。
SMキャンバス作品の存在感を最大化する「色彩設計」と空間演出

今回のミッションにおける最大の課題は、SMサイズという比較的小さなキャンバス作品10点をいかにして広い展示空間の中で適切なサイズで且つ大きく見せて存在感を出し、強力なインパクトを与えるメインコンテンツへと昇華させるかという点にありました。
1. キャラクターの個性を色彩で翻訳する
まず着手したのは、作品の中に描かれたキャラクターの表情やストーリーの読解です。 例えば、クールなコバルトブルーを基調とした作品には、あえて補色に近いビビッドなネオングリーンの側面パーツを組み合わせました。これはダークな青色にネオンカラーの「遊び」を加えることで、作品のポップな毒気やユーモアを視覚的に感じさせる狙いです。
2. 空間全体を「リズム」で支配する
10点の作品が壁面に並んだ際のシミュレーションも徹底して行いました。全ての額装を同じ色で統一すれば、整頓されたスタイリッシュな印象にはなります。しかし、程氏の作品が持つ強いエネルギーを表現するには、整頓よりも「面白いと感じるリズム」が必要でした。 隣り合う作品同士の色が喧嘩せず、かつ互いを引き立て合うようなグラデーションとコントラストの配置。これにより、展示壁面全体が一つのインスタレーションアートのように機能し、来場者の視線を強制的にロックする空間支配力を生み出しました。

アクリル額装の構造と技術:作品に「浮遊感」と「光」を与えるカスタム仕様

今回採用したオリジナルフレーム「アートカプセル」は、単なるアクリルボックスではありません。360度どこから見ても美しい透明度と、エッジ(断面)が集める光のラインが特徴です。
・未来的な浮遊感
キャンバス作品をカプセル内に固定する際、背面に計算された余白を持たせることで、作品が空中に浮いているような独特の浮遊感を演出しています。これにより、キャンバスの物質的な重さを消し、デジタル世代のアート感覚にも通じる「軽やかさ」と「未来感」を付与しました。
・集光するエッジ
特注の高品質アクリル素材は、室内の光を断面に集め、自発光しているかのようなネオン効果を生み出します。この光のラインが作品の輪郭を強調し、小さなSMサイズの作品であっても遠目から見た際の存在感(アイキャッチ効果)を数倍に高めます。

【実績】額装で作品価格を3倍に設定し、完売を導いた販売戦略


この攻めの額装は、単なる自己満足のアートワークではありません。明確な結果として、市場価値の向上に貢献しました。
1. 3倍の価格設定と即完売

当初、キャンバス単体での販売が想定されていた価格に対し、アートカプセルによる付加価値(耐久性、デザイン性、一点物としての品格)を上乗せすることで約3倍の価格設定を行いましたが、結果として蓋を開ければ、会期初日から売約が続出。特にカラーカスタムを施した作品はコレクターからの反応がすこぶる良く、即座にお迎えが決まりました。これは、「額装にお金をかけると高くなって売れない」という定説を覆し、「考え抜かれた額装は作品の価値を正当に証明する」ことを実証しています。
2. SNSでの爆発的な拡散(バイラル)

額装が完成したことを撮影したInstagramのリール動画は、瞬く間に拡散され、国内外から大きな注目を集めました。「このフレームはどこで買えるのか?」「作品とセットで欲しい」というコメントやDMが殺到したのです。 写真映え、動画映えが必須となる現代のアートシーンにおいて、光と色を操るアートカプセルは、作品を「バズるコンテンツ」へと進化させる武器となります。
作品価値への投資:アーティストのブランド力を高める額装とは

プロのアーティストの皆様には、ご自身の作品が持つポテンシャルを、ありきたりな額装で隠さずに考え抜かれた新しい額装で発揮させていただきたいと切に願っています。
今回の程亮介氏の事例が示すように、額装とはコストではなく、将来のブランド価値を高めるための「投資」です。作品のクオリティが高いからこそ、それを包むパッケージにも相応のクオリティと遊び心が必要です。 これはアートに限ったことではありません。どのビジネスにも必要な考えです。
キャンバスの側面、裏側の処理、そして展示空間との調和。細部までこだわり抜いた額装は、コレクターに対して「この作家は細部まで神経をいきわたらせている」という信頼感を与え、購入への大きなひと押しとなります。
あなたの描く世界には、まだ誰も見たことのない色のフレームが似合うかもしれません。 作品の価値を数倍にも引き上げる「戦略的な額装」を、ぜひ一度体験してみてください。


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