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イラストレーター山中智郎が語る「額装」の価値|額装家・多喜博子との対談

  • tenkuunomori
  • 10月11日
  • 読了時間: 8分

更新日:4 日前

公開日:2025年10月11日

山中智郎氏インタビュー 


額装作家 多喜博子(以下、多)が、イラストレーター山中智郎氏(以下、)に、額装を通じて感じた魅力や、アートについての思いをお聞かせいただきました。


山中智郎さんと額装家多喜博子と作品「月とうさぎ」


【山中智郎 プロフィール】

1997年生 宮崎県小林市出身

2020年 大分芸術短期大学専攻科ビジュアルデザインコース卒業

現在福岡市に拠点を置き活動中。


●展覧会履歴

2020年 Unknown Asia 2020(大阪)

2021年 個展「志」Gallery MUMON(東京銀座)

2021年 Unknown Asia 2021(大阪)

2022年 グループ展「鸞翔鳳集Vol.8」Gallery MUMON(東京銀座)

2022年 個展「凛」SUNQGO &Masamune(大分)

2022年 個展「たおやか」Chignitta(大阪)

2022年 チャリティー展覧会「ART RELATION」(大阪)

2023年 グループ展「you want some」TAGSTA(福岡)

2023年 PLAZAウォールアートプロジェクト(福岡)

2023年 個展「えにし」artas Gallery(福岡)

2024年 グループ展「Screw Driver art show vol.3」博多OVERGROUND(福岡)

2024年 個展「うるかみ」銀座三越(東京)

2024年 個展「金色掻き分け流るる乙女(maden flowing through a golden field)」京都蔦屋書店(京都)

2024年 グループ展 「In Praise of Shadows」Numero51(イタリア )

2024年 Mango art festival 出展(タイ,チェンマイ)




額装家多喜博子によって薄いピンクの交差額装で額装された山中智郎さんの作品「月とうさぎ」



多 山中さんの作品は大きく2つのシリーズに分かれていますよね。ひとつは「麗髪(うるかみ)」シリーズで、もうひとつは何と言うシリーズでしょうか?



山 シリーズ名はまだ決めかねていて、Road to Nirvana(以下RTN)「涅槃への道」みたいな感じです。このシリーズは成長段階にあってシリーズ名も決まっていないんです。麗髪シリーズとこのシリーズはほぼ一緒に始めたのですが、麗髪の方が後発で発表しています。


最初の個展ではどちらも発表していて、麗髪シリーズはコンセプトがパチパチっとハマっていって技術的にも今持っているのが全部出せていて現在の海外的トレンドにもフィットしているので現状は良く見てもらえている作品です。


もうひとつのRTNシリーズのほうは、多喜さんに額装してもらったもので、あれは仏像とか余慶の教義をテーマやモチーフにしているから、まだ自分自身が若いこともあり成長段階で、もうちょっと歳を経ると厚みがでてくるのかなと思うから並行して作っているところです。



額装家多喜博子の額装を施したイラストレター山中智郎作「月とうさぎ」


多 麗髪の方は完成形なでのすね?



山 そうですね。描き始めた時から完成形に近かったこともありますし自分の等身大がもろに出ていて、僕はネット世代なんですがそのリアルが出せるのがとてもフィットしている感じ。自分は制作動画を見せたり、どんな画材を使っているかを紹介したり、絵に合うような音楽を選択したりします。 

そうするとコメント欄で色々質問してきたり、視聴者同士で評論しあったりしているのを見れる。美術館のキャンバスの四角の枠内だけの情報とは違う、多角的な作品の味わい方を出来る世代だと思います。



多 山中さんのSNSを拝見していて、そんなところも見せて大丈夫なのかな?とドキドキしてしまいます笑



山 僕より上の世代のひとたちにも言われるんですよ。自分の技法とか見せていいの?とか。いや、全然大丈夫。真似してくれたほうが業界の発展になるから。絶対真似できないとことは逆に撮影してないですし。まあ、見栄えが良いところだけを出しています笑。苦労して得たこととかは出してないですよ。



多 それはそうですよね。私も制作工程とか投稿すると、やめたほうが良いとか周りに言われますし、真似されたら嫌だなって思います。



山 でも結構大丈夫なんですよ。実際出してみた結果、そんな簡単に真似されない。贋作ができないって意味でも、僕がカメラの前に出てまさに作っているのは大事だなと思い始めています。


2022年大阪チグニッタスペースで開催された山中智郎さんの個展「たおやか」の入口



多 確かにそれが抑止力にもなりますね。

山中さんが表現したいものは、麗髪シリーズもRTNシリーズも、ご自身の世代のリアルが共通しているのでしょうか?



山 それはかなりありますね。自分の今の考え方のリアルは反映させたいです。例えば、RTNシリーズは仏教系の教義みたいなのもあるけど、欲を捨てる道だからそのためには自分の中にある欲を捨てないといけないじゃないですか。今は自分の中の欲望を言語化して形にして受け入れる、下世話な欲望でも受け入れる、そういうテーマで現状は作品を作っていこうとしています。


山中智郎さんの個展「たおやか」で作品を挟んで並ぶ額装家多喜博子とイラストレーター山中智郎さん




多 額装させていただいた「月とうさぎ」の額装は、絵の中に曲線が交差した動きが見えたのでその曲線を目立たせたいと思い、額装は直線が交差したデザインにしました。

2作目の山中さんの額装はP社(顧客名)からの依頼だったのですが、あの時は何がお困りだったのでしょうか?



山 あの時は原画だけの納品の予定でしたが、クライアントさんと相談してせっかくだから額装まですることにしました。 大阪のお客様だったので、それだったら関西で額縁を探した方が良いなと思って。それで「月とうさぎ」の額装をしてもらった大阪にいる多喜さんにお願いしたのが背景です。



山中智郎氏作のP社からオーダーされた絵画



多 山中さんは福岡でお客様は大阪だから、遠隔になると絵を納品するだけで終わりじゃなくて額装してからなのでまたハードルが高くなりますよね。



山 そうなんですよ。麗髪のお客様は僕がいる九州以外に多くて、そちらも額装を頼まれるんですよ。麗髪のほうはギャラリーが売るのでギャラリーに額装をやってもらうんです。麗髪の額装はもうシンプルな木枠の額にするという規定を作りました。なので、どんな額にするかとかのやりとりが無くてスムーズに額装して納品できる。


RTNシリーズはまだ額装をいろいろと試したりして決めかねているので迷ってしまうことが多い。お客様に選んでもらうパターンや自分で決めるパターンとかを試しています。だからこの1-2年で自分の芯をもって額装もこうしてくださいって言えるようにしたら作品が成長できるのかなと思っています。額装を選ぶ方法を僕が固めるのが良さそうだなと現段階で思っています。



山中智郎さん作「月とうさぎ」の額装の左下部分のクローズアップ


多 額装方法や額の種類ではなく、先ず誰がどう決めるかを決める、ということですね?



山 そうです。絵を描いて額装までの流れですら自分は理解できていなかったので。僕は全部試して経験しないと判らないので。いろいろと試してみて、僕が自信を持って額を指定した方がお客様はラクなんだろうなというのがわかりました。今後多喜さんにお願いする時は、ここはこうしてくださいと言ってしまうかもしれない。



多 それは言ってもらって全然良いですよ。基本方針やガイドラインをちゃんと伝えてもらって任せてくれるほうが私はやりやすいです。全部お任せって言われるよりも取り掛かりやすいです。山中さんが額装する際に大事にしたいポイントは、工程の流れなのですね。



山 出来るだけシンプルな流れにしたいのもあるけど、自分が自信を持って納品できる額装の流れにしたいです。



多 私に額装を任せて良かった点はどんなところですか?



山 色、ですね。色の選びかた。あと、自分では選べないすごく太い額縁を選んでくれていた。そんな種類の額があるなんてことも僕は知らなかった。そういうのをチョイスしてくれるのもありがたい。P社さんの額装の値段は結構しましたよね?お客様は気持ちよくOKしてくれるだろうかとひやひやしたんです。



多 はい。他にもご提案しましたがこれがイチオシですとお勧めして。お客様は実物を見て大変満足してくださって、これくらいの値段がするのは納得、と言ってくださいました。



山 自分が自信を持って提案することが大事なんだなと勉強になった一件でした。



多 予算に合ったものももちろんご提案します。ただ、予算を越してもこれは絶対良い!というものがあれば、自信を持って提案します。P社さんの額は、アーティストである山中さんに依頼して描いてもらった絵を新しい会社のエントランスに置くならこれしかない、と思って。



山 それは良いですね。推す力。P社の社長はあれからずっとSNSを見てくれてるんですよ。



多喜博子による「月とうさぎ」の額装に施した銀色の飾り金具



多 山中さんが額装を依頼する上でのポイントはありますか?



山 今後こうしたいと考えていることなのですが、これからもし依頼する時は、額の主張の塩梅は気を付けていきたいです。配色は合っていることが大前提ですね。僕の作品は絵の周りに枠を描いていることが多いのですが、絵の中の枠をもっとシンプルにして実際の額で補うように発注してみようかなとも考えています。


額装してもらった「月とうさぎ」の絵につけてくれていた飾金具がありましたが、あれは毎回施して欲しいくらいとても良く似合っていました。RTNシリーズの方はラグジュアリーな額が似合うと思うし、麗髪の方はできるだけ簡素な額にして対比させていこうかなと。一度すごくラグジュアリーな額を作ってみたいですね。その時はぜひお願いします。



多 素材の以外な組み合わせで山中さんの絵の未来感を出せるなと考えています。

あと、私に期待してくださっていることがあれば教えてください。



山 僕のデザインスケッチや絵の中の模様を基にデザインを作ってもらったり、細かい要望とかきいてもらえたりできれば良いなと。(画面で絵を見せながら)こういう柄にしたりとか。



多 もちろんできますよ。



山 そうなんだ!それは他のイラストレーターも期待してそう。そんな要望はあると思います。



多 可能です。柄や模様などデザインの元絵があってそれを基に全体のデザインを作り上げて素材を提案して額装を完成させていく流れになります。



山 それは楽しそうだし、他にそんなことができるところは知らない。みんな知らないはず。やってほしい人は多いと思います。


額装家多喜博子による額装をされた山中智郎さん作「月とうさぎ」の右下からのアングル画像




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